栄 養 歳 時 記


4月 前 期
看護学生の質問から

 私はホテルで食事療法対応フランス料理を提供しながら、甲府にある看護専門学校で栄養学の非常勤講師をしています。
 4月より9月の前期授業で、平成15年度は毎週火曜日午後、50分授業4時限を担当します。気力と体力が必要ですが、将来の看護師さんには、栄養学に興味を持って欲しいと願って一生懸命講義しています。
 今年も新しい生徒と出会う時期になりました。

 生徒の質問は素朴で単純ですが、反面、的確な回答には迅速な頭の回転が必要なものもあります。

 ある生徒が「消化の悪い食物は腹持ちが良い食物ですか?」と質問しました。
 「消化の悪い食物の中で、胃に停滞時間が長い食物は、腹持ちが良い。」このような答えになると思うのでが、消化の悪い食物と言う定義を説明しなければ十分な回答になりません。
 
 消化の悪い食物という言葉で表現される食物は、二種類あります。
 a消化に時間がかかり吸収される食物
 b消化吸収されない成分を多く含有する食物
 です。

 腹持ちが良い食物とは、胃腸内(特に胃)に停滞時間が長い食物と言えます。
 腹持ちが悪い食物とは、胃腸内(特に胃)に停滞時間が短い食物と言えます。
 胃に食物が停滞しているという感覚は、胃の重量感と膨張が脳神経に伝わり認識されます。

 消化されない成分を含む食物は、全て胃腸内に停滞時間が長いとは言い切れないので、前に書いた答えになるのです。
 生徒が興味を持った時こそ良い機会です。この質問には、つぎの週に回答と質問に対する考え方を講義補助プリントとして配布し、食物別の胃内停滞時間の一覧表を添えて示し、講義教材としました。良い教材となりました。

 質問をする側はその質問に対して考えている(思考が先行している)状態であり、質問をされる側は、その質問をされるまで、その質問については思考していない白紙の状態です。
 一瞬にして回答するには、必要な知識を呼び出し、一つに組み立て、的確な言語を使用して明解に発言する迅速な脳の対応が必要であると感じます。講師にとって、一方的に知識を講義している時には経験しない、緊張の一瞬です。
 
 私はひそかに質問を心待ちにしています。私自身の思考の訓練になると考え、真剣に回答しています。
 生徒の目は新鮮であり、それを専門とする人々の間では、あまりにも一般的で説明が難しい質問もあります。専門知識を以っても即答出来ないこともあります。その時は、少し調べる時間をくださいと、答えをつぎの週まで待っていただきます。 調べた結果、今は解明されていないという答えもあり、これも立派な答えです。
 間違っても、即答できないことを心に隠し、

 「そんな事は今は知らなくても良い!!!」

 と言わない様に、これだけは心に誓っています。私の経験からです。

 私の授業は2時間続きです。中間休憩は努めて教室で過ごします。この10分間、栄養と食事に関係することならば、その日の授業課題に直接関係なくても質問して良いことにしています。
 
 今年の生徒はどんな質問をするでしょうか。もう直ぐ授業開始、楽しみです。